口の中はなかなか見せてくれない子も多く、初期の病変でも正常なのか腫瘍なのか見た目もわかりにくいことも口腔がん。種類によっては余命が短くなってしまうだけではなく、顎を切除しなければいけなくて食べ物や飲み物もこぼれやすくなってしまうといった生活の質に影響を及ぼすことも多いのです。今回の江口先生のコラムでは、口腔がんだけではなく、他の口の中の疾患を早期発見するための検診について紹介しております。
歯科医と獣医のダブルライセンスを保有し、高度歯科医療を施せるスーパードクター。
<定期的な歯科検診とホームデンタルケアでペットの命を救いましょう!口腔がん早期発見のために飼い主さんができること>
御世話になります、当院歯科・口腔外科の江口です。
今回は、『口のなかにできるがん』つまり『口腔がん』を早期発見するために飼い主さんができることについて、お話したいと思います。
さて、表題にある歯科検診とホームデンタルケアで命を救う、これをみると『なんか大げさな言い方してるな』『そんなんで命が救えるのかね?』
そう思う方も多いでしょう。これ、じつは言い過ぎでもないんですよ。その理由を先にお話しましょう。
まず、口腔がんという病気の恐ろしさについて話します。
われわれ人間では当たり前と思いますが、『がんは放置すると死ぬ病気』という認識は誰しもありますよね。
口腔がんも、もちろん例外ではありません。口腔がんで亡くなられる方は普通におられます。
これは犬や猫といったペットも人間と同じで、口腔がんになります。犬猫の口腔がんも人間同様に放置すると死ぬ病気です。亡くなる子が普通にいます。
あまり知られていないようですが、口腔がんの闘病は過酷です。進行した口腔がんでは、お口を動かせなくなったり、顔面の変形が出たり、がんのまわりが腐って腐臭を放ちます。口腔がんは、間違いなく『飼い主さんがみていて辛いと感じる病気の1つ』だと思います。(診療する私からみても辛いと感じるときがあります)。
口腔がんは、数日で一気に大きくなることもあり、また、転移もありますので、予断は許されません。待つほどに命の危機が迫りくるとも考えてください。
口腔がんが、やっかいなのは、がんが大きくなると、できた場所により、口を閉じたりしたときに、歯ががんに食い込むことがあります。これが、がんを常に刺激することにつながり、がんの悪化スピードを早めてしまうという点です。
口を閉じるたびにがんが刺激されるという、非常に耐えがたい状況、まさに地獄絵図です。可哀そうというほかありません。
そんな口腔がんですが、まだ、がんが小さい初期のうちに、早くみつけられれば、早く手術をすることで、再発なく根治できる可能性が十分にあります。
そう考えれば、がんを早くみつけること(早期発見)が、すごく大事なことであり、それが結果として、命を左右することになる、そう言ってしまっても過言ではないでしょう。
ちなみに、体のなかにあり目視できない内臓のがんとは違い、口腔がんは、歯肉や舌など目視できる場所にできることがあるため、目でみて発見しやすいという大きな特徴があります。つまり目視で発見できる可能性が高いがんであり、飼い主さん次第で、早期発見ができることもあります。
飼い主さんでも、口腔がんをみつけられるポイントについては、このあとお話します。
さて、早期発見できる可能性があるにも関わらず、実際には発見が遅れてしまうケースが多いという、現実があります。
それはなぜか?『動物は言葉を話せないから、異常があっても人間みたいに伝えられない』それも一因ではありますが、当院で診療を続けていて思いますが、そもそも、口腔がん以前に、ペットへの歯に対する関心が、まだまだ多くの飼い主さんのなかでは、一般的ではないことが背景にあるように感じます。
例えば、『デンタルケア(歯磨き)したことない』『口をみること自体ない』『前から歯が汚れて、口臭も強いけどそんなに歯のこと気にしていない』
『ずっと歯周病があると思ってたけど、病院きたの始めてです』など、全体として歯への関心が薄い飼い主さんがおられます。
歯への関心が薄いと、必然的にお口に目を向ける機会も少なくなります。
『ペットは歯磨きが難しいからあきらめた』そういった実態も、背景にあるのだろうと察しますが、一方で歯への関心をもっている飼い主さんにいたっては、歯周病の予防のため、歯磨きをがんばっていたり、歯の定期検診にきている熱心な方もおられ、お口をちゃんと見ており、少しの異常にも気づく方が多いように思います。
口腔がんが遅れて発見される実際のケースをみますと、当科を受診されるきっかけのほとんどが、『#顔が腫れた』『#口から血がでる』『#食べなくなった』『#やたら口臭が強くなり歯周病だと思って受診した』『#他院で歯の炎症だといわれてお薬だされたけど変わらないから受診した』といったペットのお口の症状にすでに大きな問題が生じてから、受診されて発見されるケースが圧倒的に目立ちます。
飼い主さんは、まさか、その症状が、口腔がんからきているとは思っていないため、それほど深刻に考えずに当科を受診されますが、こちらで判明すると、やはり、大きな衝撃を受けてしまいます。
ちなみに、上記#のような症状が起きている時点で、口腔がんの場合、かなり進行した状態であることが少なくありません。
実際、ほとんどが、ステージが進んだ状態で発見されています。
人間だったら、自分の口のなかをみて、歯肉のここなんかおかしいな?と思ったら、自分の意思で病院を即受診することができますが、ペットの場合はどれだけ異常を感じていたとしてもそれができません。なので飼い主さんが異常に気づいてあげるまでの時間と、病院へ連れてくるまでの時間をどれだけ短くできるかが、超重要というわけです。
理想は、できれば症状がでるより前に、早い段階でみつけてあげることが大事です。
すべては飼い主さんの意識次第で、大切なペットの命が救えるかもしれないと言えるわけですが、さて、どう感じますでしょうか?
早くみつけてあげるためには、『飼い主さん自身』そして『病院』でお口のチェックをするのが、まず確実です。
それは、つまり『ホームデンタルケア』と『定期歯科検診』です。
飼い主さんが実践する『ホームデンタルケア』つまりお家での歯磨き習慣が、日ごろのお口の状態をチェックできる良い機会になります。
そして、病院で行う『定期歯科検診』では、歯を含め、お口の状態を専門的にチェックしています。
ホームケアが難しければ、定期歯科検診だけでも利用するのも有効かと思います。
高齢になるほど口腔がんの発生率は高くなりますので、シニア期のペットほど、1年毎というよりは、半年毎くらいの検診をしたほうがいいのかもしれません(シニア期の犬猫の1年は人間の数年に匹敵することをふまえますと・・)
理想的には、定期歯科検診とホームデンタルケアの2本柱を組み合わせると、口腔がんをみつける機会は断然高くなるはずです。
さて、早期発見のために、ホームケアにてお家でペットのお口をチェックする際、『飼い主さんでも見つけられる 口腔がんのポイント』をお伝えしたいと思います。今回は、『歯肉にできるがんの見え方』についてです。ちなみに私見が入りますので、あくまで参考程度にしておいてください。
まず犬や猫の健康な『歯肉;しにく』つまり『歯ぐき』の特徴ですが、通常表面はデコボコしておらず、滑らかで、ハリがあり、ブヨブヨせず引きしまったかたちをしています。色はきれいなピンク色ですが、メラニン色素のある犬や猫は歯肉の色も黒っぽかったり、褐色だったりします。
しかし、歯肉にがんができると、『表面のかたちの変化』、『色の変化』、『血の出やすさ』が現れます。
<歯肉がんの見た目のポイントは、以下の★3つです>
★表面の見た目がボコボコして膨らみ、気持ち悪いかたち(ブツブツなど)をしていることが多いです
★色はまわりと明らかに違う、やたら赤かったり、赤とピンクが混じっていたり、濃い黒だったりすることがあります。
★歯肉のがんは脆く、さわると簡単に出血することもあります。
実際の歯肉にできたがんの写真をご覧ください。先述したポイントのニュアンスが伝わるでしょうか?
ただし、すべての歯肉にできるがんが、このポイントに当てはまるわけではありませんので、ご留意ください。
ですが、この3つのポイントを、ぜひ参考にして、普段からお口のなかをみるようにしていただけたら幸いです。
ちなみにですが、歯周病と歯肉のがんが似ていることもあります。
症状や見た目は歯周病でも、歯肉のがんだったケースもあります。ぜひ気にとめておいてくださいね。
ペットのお口のチェックをしてみたとき、なにか変だな?もしかしたら?と思ったら、その直感を大切にしていただき遠慮なく当科を受診してくださいね。
基本的には予約優先の診療ですが、がんの場合は、時間との勝負であり、緊急性もあるため、その限りではありません。
手術などで対応できない場合もありますが、当日の診療を希望される際は、木曜日に当科担当医までお問い合わせてください。
当院歯科・口腔外科では、口腔がんの早期発見をスローガンとして、飼い主さんでも実践できる口腔がんの見つけかたをはじめとした情報を発信しつつ、口腔がん検診や、定期歯科検診の普及に努めています。『ヒト医療の当たり前を動物医療の当たり前へ』
今後も役にたつ情報を当院HPやyoutubeで発信してまいります。
最後に、当院かかりつけの飼い主さん以外にも、当院HPの歯科レポートをご覧いただいているとのお声をいただいております。
今回の、この口腔がん情報の発信が、当院かかりつけの飼い主さんだけなく、遠く離れた飼い主さんたちの目にもとまり、ペットの口腔がん早期発見に少しでも役立つことができれば幸いです。
飼い主の皆様、口腔がんの早期発見ができるよう、頑張りましょう!
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
※当院の口腔がんの情報発信は以下#もぜひチェックしてくださいね。
お知らせアーカイブ:#口腔がん検診について #お口のホクロが!?まさか!?
歯科レポート: #歯周病?口腔がん?
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