ワンちゃんにも虫歯はあります。そして、予防できる病気です。虫歯の治療で、通院などご苦労された飼い主さんも多いのではないでしょうか?ヒトのようにすべての子が保険適応とは限りませんので費用も掛かってしまいます・・。全身麻酔での治療なので通院ではなく1回の治療で長時間の処置になるので負担もあります。ぜひ江口先生の解説をご覧ください。
歯科医と獣医のダブルライセンスを保有する医師
御世話になります、当院歯科・口腔外科の江口です。
この写真は、先日当科を受診したワンちゃんの上の奥歯を撮影したものです
ご覧いただくと分かりますが、真ん中にある歯の中央に大きな黒っぽい穴が開いています。
これ、実は『虫歯:むしば』です。
『えっ!犬も虫歯になるの?』そう驚いた方は多いのではないでしょうか?
虫歯は私たち人間におなじみの歯の病気ですので、子供から大人まで「虫歯」を一度も聞いたことがない人はおそらくいないでしょう。
犬と猫の虫歯についてお話しますと、猫の場合はきわめてまれ、犬の場合も実はまれな病気であり、犬や猫は私たち人間に比べて一般的に虫歯になりにくいとされています。
例えば、外国のある調査によると成犬の5%に虫歯がみられるとの報告もあります。
100頭中5頭に虫歯がある計算です。普通は少ないと感じますよね?ですが、私には個人的な感想として5%をまれというにはやや微妙な数値と感じます。
虫歯はまれという一般論から極端に「犬は虫歯にならない」とおっしゃる先生もなかにはいますが、「決してそんなことはない」とここで飼い主さんに知っていただけたらと思います。
ちなみに余談ですが、わたしたち人間、例えば日本人の場合、虫歯はどのくらいの割合でなるかご存じでしょうか?
「虫歯がいま現在ある」あるいは「以前虫歯を治療したことがある」つまり虫歯になったことがある経験者(虫歯罹患率)は、 20歳以上の人で、なんと9割以上とのことです。<厚労省H28年歯科疾患実態調査より>
つまり9割以上の日本人が虫歯になるといって差し支えないともいえます。
10人中9人は虫歯経験者で、虫歯になったことがない人が希少だと言えるわけですよね。
『人間の虫歯ってどれだけ多いんだ』と思いませんか?ちなみにこれを裏付けるように私も、歯医者として人を診療するときには、幼児~お年寄りの方まで虫歯の治療が圧倒的に多くの割合を占めています。それだけ人間の場合は珍しくもないありふれた歯の病気が虫歯というわけです。
さて、そんな虫歯の原因はご存知でしょうか?それはお口に住んでいる虫歯菌(ばい菌)です。
『甘いものばかりを食べてると虫歯になるぞ~』とよく言われたことありませんか?
これは甘いものに含まれる糖を利用して、お口に住んでいる虫歯菌が酸を作り出し、歯を溶かしてしまうためです。
そう、虫歯とは、歯が虫歯菌のつくる酸で溶かされてしまう病気です。
さて、糖質は炭水化物に含まれます。例えば日本人は『お米』『パン』といった糖質主食ですので、これを常食とする限りは、虫歯菌が酸を作る環境から逃れることはできません。
とくに炭水化物の糖うちショ糖(スクロース)は虫歯菌がとくに好んで酸をつくる糖と言われています。ショ糖は甘いジュースやお菓子に含まれますので、これをだらだらと摂取するほど虫歯のリスクが高くなるとされています。
つまり虫歯は食習慣と関わりが深い病気ということができます。
犬や猫の場合はどうでしょうか?犬や猫は、多くの場合、市販のフードを食べていますが、それは人間のように糖質に富んだ食事内容では基本的にありません。
また唾液中の酸性アルカリ性を示すpHがアルカリ性に傾いているため、酸があっても中和しやすい環境にあるとされています。
犬の場合、人間が食べる糖類を含む甘いものをあげてしまうと食べてしまうことがあります。サツマイモ、ケーキ、パン、果物といった炭水化物をよく与えている飼い主さんがいますが、喜んで食べるからと、これが習慣化すると、いくらアルカリ性の唾液だからとはいえ、虫歯菌が酸を作る量が増えてしまいますので、中和できずに歯が溶けることが懸念されます。つまりそういった食習慣により、虫歯になるリスクが高くなるというわけです。
この写真の子も、飼い主さんが果物をよくあげていたとのことでした。
虫歯の状態は、写真の左上部分をご覧ください、虫歯をほじったところですが、中から褐色のカスがボロボロととれています。
これは虫歯で溶けて脆くなった歯の部分のなれの果てです。
本来硬いはずの歯が、酸で溶けたことで、まるでチーズのように簡単にボロボロと壊れていくんです。これが虫歯です。
虫歯がすすむと、犬も人間のように歯がズキズキと痛んだり、顔が腫れたりすることもありますので、それはまったく人間と一緒です。
人間も犬も奥歯はとくに虫歯の好発部になります。
とくに奥歯にある歯の小さな溝が侵されやすいです。注意しましょう。
『歯に黒や褐色の変色部があった場合は虫歯かもしれない』と一度疑ってみてください。
最後に、虫歯を予防するためには、基本的に、人間が食べるものを与えない、犬用のオヤツなどで炭水化物系の甘いものが含まれるものを与える際はたまに程度にとどめる。
歯についた虫歯菌を減らすために歯磨きをする。
そして余裕があれば歯の検診などの際に虫歯予防のフッ素を塗ることや、歯の処置の際に、虫歯になりやすい溝の予防填塞処置(シーラント)を行うことも有効です。
当科では、犬や猫に虫歯の治療が必要な際は、人間の歯科医院で行う治療と全く同じ虫歯治療を行っております。
虫歯が深くても、歯の神経が生きていれば最大限それを温存する覆髄治療も行うことで人間患者さんでは良好な治癒成績を得ており、必要に応じて動物にそれを応用することもあります。
『動物は虫歯にならない』という考えがあった方は、これを機に動物も『虫歯になることもある』『虫歯にさせないにはどうしたらいいか』という考えをもってペットと接していただけたら幸いです。
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