歯科医と獣医のダブルライセンスを保有する医師
この写真の猫ちゃんは慢性口内炎で長く苦しみ、口内炎治療のための対症療法として先日、当科にて、2回にわけて奥歯と前歯のすべてを抜歯する(全顎抜歯)を行った子です。
口内炎が本当にひどいときの写真はお見せできないほどショッキングで、ただの口内炎というよりも、もはや、のどのまわりが大きく腫れてただれ、強い痛みから食事もうまくとれずに、体重も落ちて、あばらや背骨が簡単に触れられるほどガリガリの状態で、毛並みも粗い状態でした。
抜歯後の結果はこのお口の写真を見ての通りです。これは術後2カ月の写真です。
歯はない状態ですが、口内炎がすっかり治り、お口の中の色もきれいなピンク色をしています。
飼い主さんから伺ったところ、治療後の変化として、よく食事をとるようになり、体重も大きく増え、肉づきも良くなり、以前より活発になったとのことです。
毛艶と毛並みもよくなり、顔つきもふっくらしています。
飼い主さんは、ここまで改善されたことに大変喜ばれていました。
このように抜歯治療が奏功すると、炎症がなくなることで、お薬なしでも、痛みなく苦痛なく生活できるようになるため、目にみえて改善効果が表れます
俗に言う生活の質(Quality Of Life)が病気のときに比べ明らかに高くなります。
歯をぬく『抜歯』というと、一般にネガティブにとられがちな処置の1つではありますが、ネコの慢性口内炎では、お口の環境を改善し口内炎を治す希望がある『頼みのつな』『伝家の宝刀』のような処置です。
ネガティブにとられてしまう理由には、『歯がなくなると何も食べられなくなる』『歯がなくて何も食べられないと弱ってしまう』といった飼い主さんの誤認や『歯を抜かれるなんてかわいそうだ』といった感情的なものがあります。
ここで言っておきますが、『歯がなくなると何も食べられなくなる、弱ってしまう』これは大きな誤りです
『歯がないと死ぬ・食べられない』
これは野生動物には当てはまるでしょう、獲物をとるために歯を使いますからね。
人間も自然界に投げ出されサバイバルを余儀なくされれば硬いものも食べないといけないでしょう、人間もそういう状況だと歯がないことが命取りになるかもしれません。
これはあくまで自然界でのお話ですよ。
いまこの人間社会で生きている環境ではどうでしょう?
たとえば人間の場合、歯がまったくなく、入歯もなにもしていない人(とくにご老人の方)、普通にいますよね?
その人たちはものが全く食べられていないでしょうか?
人間社会においては、食べ物を煮たり焼いたりと加工でき、栄養バランスの豊富な柔らかい食事もありますので、歯がない人でも、噛まなくても栄養がとれるような環境にいます。
さて、人間社会で人間に飼われているイヌやネコは普段どんな食事をしますか?
そうペットフードですよね(ドッグフードやキャットフード)つまり加工品です。
ドライフードは乾燥していると硬いので噛まないと砕けませんが、人間がふやかしたり、あるいは粉砕して細かくすれば、ほら、歯がなくても食べることができますよね。
実際、歯がゼロでも、ちゃんと人間側がフードの形態を工夫してあげることで、問題なく元気で生活しているイヌやネコはたくさんいます。これは事実です。
飼い主さんが抱く誤解やネガティブな感情は、ときに治療を遅らせ、場合により動物を苦しめてしまうことにもつながりかねないことをご理解ください。
猫の口内炎の治療のように、病気によっては、『抜歯が治療になる』こと、『抜歯の意味を正しく知る』ことをレポートやお知らせを通じて今後も発信してまいります
猫ちゃんの慢性口内炎については当院HPの歯科レポート『猫慢性口内炎とは』に記載しておりますのでぜひご覧になってください
最後に、長引く猫ちゃんの口内炎でお悩みの飼い主さんがおられましたら、どうぞ遠慮なく当科へご相談ください
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
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