飼い主さんに、ちょっとお尋ねします、お家のワンちゃん、ネコちゃん、最近なんとなく食欲が減ったと感じることありませんか?
例えば、『昔はよくフードを欲しがったのに、最近あまりほしがらない』『なんとなく食いつきが悪く感じる』『途中で食べるのをやめちゃう』
など・・それ、単に『年をとったから食欲が減った、だから食べる量が減ったんだね』であまり気にとめてないなんてことありませんか?
それほんとは、食べたいのに食べられないという状況だからかもしれませんよ・・・
さて今回お話する内容は、『食欲がない、食べる量が減った』いわゆる食欲不振(しょくよくふしん)について、動物と人間のお口の専門医という立場から切り込んで、解説していきたいと思います。
これまでに人間と動物で同じお口の病気をみてきた経験から得た、あくまで私見となりますので、あしからず、どうぞご覧ください。
まず食欲不振になるとき、といったら、みなさんはどんな時をイメージしますか?『やっぱり体調不良のときでしょ!』というように、体調不良、言ってしまえば、病気のとき食欲不振になるとイメージされる人が多いのではないでしょうか?ほかにストレスだったり、胃腸の動きが悪かったりなど、食欲不振になる要因は非常に多岐にわたるとされています。
さて、お口に問題がある場合も、食欲不振になることがあります、ただ、おそらく皆さんがイメージされるような食欲不振とは少し違います。
それは、『食欲がない・・・だから食べる気がしない』それがふつうの食欲不振だとすると、お口の問題で食欲不振になる場合は、どちらかといえば『食欲はある、食べたい・・・でも食べられない』といった『本当は食べたいのに食べられない』という状況が意外と多いように思います。
『食べたいのに、食べられない』この状況が起きてしまうのは、お口の問題でいうと、例えば①~③のような状況のときです。
これら『痛み』『機能の障害』があり、その度合いが強いとき、口を動かすのも非常に苦痛になりますので、いくら食べたいと頭で思っていても、それに反して体は食事の取入れをうまくさせてくれません。
これは、動物に限らず、わたしたち人間でも、当然同じ状況になることはあります。
そうして食べたいのに食べられない食べられないという状況が、一時的ではなく、慢性的に長期間続くと、どうなると思いますか?
十分な量の食事がとれませんので、当然痩せてきます、これは、いうなれば、したくもない食事制限をしている状況、する気もないダイエットをしてるのと同じなんですね。
さて、それが続きますと、栄養失調になり、ひどいとガリガリに痩せて、病弱になり、衰弱、ひどいと命にかかわる状況になることもあります。つまりお口に問題があり、食べ物の取入れが困難になることは、人間、動物関係なく、生きるか死ぬかの死活問題なわけです。
例とすると、猫ちゃんに難治性の慢性口内炎がありますが、本当に口内炎がひどい子はそういう状況になっている場合もあります。
というように、食欲不振の原因となる、お口に『痛み』『機能の障害』を起こす具体的な病気やケガとしては、例えば以下のものがあります。
口腔がん、口内炎、歯の病気である重症の歯周病、歯の神経の炎症などは、多い印象です、ほかに尖った歯が口を傷つけたり、歯の生える位置や向きが変で口を閉じると傷ついてしまうといった歯による障害や、異物によるお口の外傷もありますし、顎の骨折や、顎がはずれたり、顎関節症といったあごの痛みや動きが制限される病気などもあります。
これらの病気は早く見つけて、早く対処(歯科的な治療介入など)してあげれば、食欲不振が改善し、栄養状態もよくなり、体重が増えるケースは経験上、多いと感じます。
ちょろっと、人間の医療分野のお話をすると、総合病院や大学病院では、NST(栄養サポートチーム)という、入院患者さんの栄養状態を多職種チームによるアプローチで、改善させるという取り組みがあります。栄養状態が悪いと入院中に病気にかかりやすかったり、手術後の回復に時間がかかります。これをどうすれば、栄養の改善ができるか、もし入院患者さんが、お口の問題をかかえていれば、歯科的な介入を、歯科医師がすることで、栄養状態の改善につなげるということもあります。
動物医療の分野では、あまりこのNSTは提唱されていないようですが、人間の医療分野のように、お口の問題を、歯科的な介入から、栄養状態を改善させるという取り組みは今後必要だと思います。
ちなみに、当科ではそれを実践していますので、ご興味ある方はご相談ください。
すみません、話が脱線しました。
さて、そうした、病気やケガなどの、お口の問題をかかえてしまっているペットの異変に気づくために、飼い主さんにぜひ知っておいてほしいところをこれからお伝えします。
ちょっとしたことですが、異変を早くみつけてあげるためのポイントになります。
ポイントはずばり、動物のことなれど、『わたしたち人間目線で食事のときの行動をよみとく』です。
意外かもしれませんが、イヌやネコがお口の問題をかかえているとき、食事のときにとるような行動は、わたしたち人間がお口に問題をかかえているときにとる行動と似ているんです(※私見ですが・・・)
ちょっとここで、こちらをお読みいただいている飼い主さんにお願いがあります。イメトレです(笑)
例えば、自分がお口にいま、問題をかかえていて、歯や口が痛かったり、口の動かしずらさがあるとしたら、どんな食べものなら食べられますか?食べたいと思いますか?
さっそく、イメージしてみましょう。一番イメージしやすいのは、誰もが一度は経験あると思いますが、口内炎のときの痛みを、ぜひご自身で思い出してみてください。
食卓に、フランスパンと食パンが置かれてます、食事はこの2択しかないとしましょう。ここではどのパンが好きとかは無視してください。
フランスパンはもちろん硬いです、口をよく動かし、よくかまないといけません。
食パンは柔らかいです、あまり口を動かさずとも食べられます。
普通はこの状況だったら、無理に痛い思いをしてフランスパン食べるより、さほど痛い思いもせず食べ良い食パン選びませんか?
食事が痛みで苦痛なのは、勘弁と思いませんか?自分はもちろん食パンを迷わず選びます。
さて、この人間の感覚で、例えば、ペットに普段与えている食事内容をみてみましょう。
大多数の飼い主さんは、イヌ、ネコの主食に与えているのは、総合栄養食のドライフードなのではないでしょうか?
ドライフードはご存知のように、乾燥しており、歯を使い、かみ砕いて食べるような形状をしていますので、それなりに硬さがあります。
一方、缶詰やパウチ、半生など水分の含まれたウエットフードは、柔らかいです。
お口に問題があるとき、イヌやネコも人間同様、食事の際、あえて痛い思いを避ける行動をとることがあります。
これは、これまでに数知れず、診療してきた上での実感です。
例えば、食欲が減ったな、と思ったら試しに、ドライフードとウエットフードをそれぞれ、別々のお皿に入れてあげてみてください。
もし、いままで同じドライフードのみを食べてたのにも関わらず、それを食べるのを途中でやめて、今度はウエットフードばかり食べてる場合、ウエットフードに変えたとたん欲しがる、といった場合、さきほどの私たちのパンの例のように、『硬いものは痛いから嫌だ』『柔らかいものなら苦痛なく食べれる』という行動と同じだったりします。意外と、そこがお口の問題を疑うきっかけにもなるんです。
ほか、食事の行動から、お口の問題に気づくためのポイントもお伝えしましょう。
おススメとしては、普段は、ウエットフードよりも、ドライフードを与えるようにしてみてください。そして、食事をするところを最初~食べ終わりまでよく観察してみてください。もしそのとき、以下★のような食べ方をするようなら要チェックです。あくまで一部の例ですが、もしよければ参考にしてくださいね。
★食べるスピードが遅い
★かまずにすぐ飲み込む
★いつも同じ方向に顔を傾けて食べている
★食べるときに急に奇声をあげる、そのあと食べるスピードが落ちる
★食べているとき、口もとを掻く
など
ペットの食欲が減っているとき、ふだんの食事風景をよくみて、気づいた行動は、自分に置き換えて考えてみれば、きっと分かる部分は多いですので、ぜひ実践してみてくださいね。
お口の問題で『食べたいのに食べられないという、苦行をしてしまっているワンちゃん、ネコちゃん』は実際にいますので、それがいち早く飼い主さんに見つかり、なくなるよう願っております。
今回お話した内容がもし該当するようでしたら、遠慮なく当科へご相談ください
最後に、食欲不振の原因は冒頭でお話したように、数多くあります、お口の問題だけでなるわけではありません、背景にお口以外の大きな病気が隠れているサインの場合もありますので、『食欲不振は、決して甘くみないようにご注意ください』
今後も飼い主さんに役立つ、お口にまつわる情報を、当科より発信してまいります
ちなみに今回の内容はyoutubeにて動画up予定です
ご興味ある方はどうぞご覧になってくださいね
今後とも何卒宜しくお願い申し上げます
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