歯科医と獣医のダブルライセンスを保有する医師
この写真をよくご覧いただくと ホクロみたいなものが歯肉にできています。
このホクロみたいなもの、なんだと思いますか?
これは先日、あるワンちゃんの歯周病治療処置の際、麻酔をかけて口の中を検診しているときに発見されたものです。
場所でいうと下顎の右側奥歯の内側(舌側)にある歯肉にできていました。
『なんだ単なるホクロか?』
『へぇ~口の中にもホクロができるんだ』
と思った方いらっしゃるかと思います。
これ実はホクロではなく『口腔悪性黒色腫』俗に『メラノーマ』という『口のなかにできたがん』です。
メラノーマは犬の口のなかにできるがんの中で最も多いがんであり、
非常に進行が早く、転移も早いため、短期間で命を奪う悪性度の非常に高い悪性腫瘍です。
ちなみに人間の場合では、皮膚にできたホクロがメラノーマだったということや、口の中にできた黒いシミがメラノーマだったりすることもあり、人間のがんのなかでもまれな希少がんですが、同じように進行が速く、転移も速く短期間で命を奪うため、恐れられているがんの1つでもあります。
口の中の粘膜や歯肉に黒い色素(メラニン色素)をもつワンちゃんやネコちゃんは普通にいますが、そのなかでも今回の写真みたくホクロのように隆起していたり、ほかに比べて黒いふちの境界が不鮮明だったり、黒い濃さが際立っていたり、触ると血が出やすいものはメラノーマの可能性もあり要注意です。もし気づいたら早めに受診してください。基本的にがんは刺激を与えると、車でいうアクセルを踏み込む状態になるため、増殖スピードが速まります。
なので万が一口の中にできものがあるような場合は、いたずらに触ったり刺激を与えるようなことは絶対に控えてください。
この写真の子は、生検(組織を一部とる検査)をしたことで、高悪性度の悪性黒色腫と確定診断されました。幸い、がんのステージは初期の段階でしたので、早期に手術を行い、大きな機能障害も残さず、結果的に完全切除することができました。発見が遅れていればかなり厳しい状態になっていたことと思います。
歯科処置を受けることで、今回のように初期の口腔がんが発見されるケースがあります。
『がんは早期発見がすごく大切です』
そして
『時間との勝負です』
当科にて歯科処置を行う際には、口の中をくまなく精査し、専門的な知識や経験を活かして口腔がんのスクリーニングを行っております。
口腔がんの早期発見につなげるためにも、シニアのワンちゃんやネコちゃんがいる飼い主さんにおかれましては、歯の問題にかかわらず口の中全般に御心配毎がございましたら、どうぞ遠慮なく当科へご相談ください。
今後も専門性をもって お口の中から命を守ってまいります。
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