呼吸器の病気は聴診やレントゲン検査だけでは確定診断が難しいことも多く、CTや麻酔下での検査など様々な検査が必要な事も少なくありません。しかし、くしゃみや鼻水を症状に来院する子の多くは歯が原因であることが多く、視診やレントゲン検査で判断でき、適切な治療を行うことで症状の改善が期待できます。鼻の症状なのになぜ歯が原因なの?という疑問に江口先生がお答えします。
歯科医と獣医のダブルライセンスを保有し、高度歯科医療を施せるスーパードクター。
当院歯科・口腔外科の江口です
あなたのワンちゃん、ネコちゃん『こんな色のついた鼻汁が出たり、くしゃみを前から繰り返してませんか?』
その鼻汁、お口の病気からきてるかもしれませんよ・・・
こんな話をすると、『いやいや待ってよ、鼻でしょ?全然歯科と関係ないじゃん』『なんで歯科専門の先生が鼻の病気を説明してるの?』
飼い主さんによっては、そう思うのも無理はありません。鼻とお口は、別物でまったく関係ないように思われるかもしれませんが、実は意外と関係していることがあります。
じつは『お口の病気が鼻に悪さをしていることがあるんです』
これ、意外に盲点みたいですね、飼い主さんは、この事実をご存知ない方がほとんどだと思います。
そして動物病院の先生によっては、この認識がない方もどうやらいるみたいです。今回はその盲点をついたお話をしますが、鼻の症状は比較的ありがちな症状だけに、絶対に知っておくべき内容だと思います。
ということで、どうぞ、ご覧になってください。
さて、まずは冒頭の写真をご覧ください、これ、小型犬のお鼻をつまんでいるところですが、鼻の左穴(こちらからみて右側)をみると『濁った白い鼻汁』がでています。
まずこの鼻汁みたときに『あれっ?』とぜひ思ってください。ほら、ふつう、鼻汁つまり鼻水の色は無色透明ですよね?
健康では、まず出ないんですよ、こんな色の鼻汁は。
『こんなふうに鼻汁が白く濁っているときというのは、鼻の中でなにか炎症など異常なことがおきているサインの場合があります。』
もし、この鼻汁が一時的であり、自然に治ってしまうようなら、問題はないと考えられますが、例えば1カ月以上続いている場合は、まず注意が必要です。
というのも、『慢性的な炎症を起こすなにかが、鼻のなかでずっと悪さをしている可能性』があります。
ですので『うちの子、しばらく、くしゃみがひどいんだよな~』という飼い主さん、試しにその子の鼻をつまんでみてください。
そのとき、もし出てくる鼻汁が濁っていたら要注意ですよ、その場合は病院で検査を受けましょう。
さて、お口と鼻の関係について簡単に説明します。
まず、鼻とお口がのどの奥でつながっていることは、みなさん、ご存知でしょうか?これ、私たち人間も、イヌやネコたちも一緒なんですよ。
ほら、水を飲んで、むせたら鼻から水が出るという経験は、誰にでも一度はあるかと思いますが、これは鼻と口がのどの奥でつながってるから起きる話なんです。
でも、のどの奥より前側で、口と鼻がつながることは、健康な場合は、ありえないんです。
それはなぜか?お口とお鼻の中をへだてる骨や粘膜の仕切りがあるからです。もし、その仕切りがなければ、飲食したものがしょっちゅう鼻へ逆流してしまいます。
鼻の中とお口のなかを隔てている、仕切りになる骨ですが、その骨、じつは歯が植わっている、上あごの骨と共通している部分があります。
ですから、『歯が植わっている上あごの骨が、なんらかの原因で壊れてしまうと、その影響が、仕切りの外つまり、鼻の中へ及んでしまうことがあるわけです』。
たとえば、『歯周病』
イヌやネコで最もよくみられる口の病気(歯の病気)ですが、病気がすすむと、歯を支える骨がどんどん壊れていってしまいます。
とくに、上あごの歯が、この歯周病になることが問題です。慢性の炎症を起こしながら、じわじわ進行することで、やがて上あごの骨もじわじわと壊れてしまいます。
歯周病は、歯周病菌などのばい菌が原因ですので、ばい菌によって引き起こされた炎症が壊れた上あごの骨を超えて、じわじわと鼻の中へと広がってきます。
そうして鼻の中へ炎症がひろがることで、鼻炎が起きるわけです。
これが『歯性の鼻炎』つまり、歯の病気が原因で起きる鼻炎です。
このような歯性の鼻炎では、だいたいお口のばい菌が悪さをしますので、化膿するケースがみられます。つまり膿がでます。
膿が混じった鼻汁は、白かったり黄色だったり、緑だったりと、無色透明ではない濁った色になるわけです。
『歯周病から鼻炎を起こすケースは、とくに小型犬の場合は圧倒的に多いです。』
なので小型犬の飼い主さんは、とくに歯のケアを怠らないようにしましょう!
鼻炎の原因が歯周病だと分かれば、治療は非常に単純です。口腔外科の手術をすることで、感染源を外科的に除去します。すると、鼻炎が術後から改善するケースは多いです。
ですが鼻炎が数年単位で長引いていたり、下手に薬を長期間使用していたせいで、鼻炎が複雑化し、歯が原因にも関わらず口腔外科手術で簡単に治らない難治性の鼻炎もあります。
もし、鼻炎の原因が歯周病といったお口の病気であるにも関わらず、その存在に気づかず、他院では、ただの鼻炎だと決めつけ、望ましくない治療をしていたり、放置しているとどうなるか、実際にあったいくつかのケースです。
飼い主さんのなかには『ある程度の病気は薬で全部治ると信じている、鼻炎くらいで手術や検査なんて費用がかかるし、したくないから先生、くすり出して』『まぁ前々から症状あるけど、様子みようかな、病院はいきたくないな』
そういう方、中にはいらっしゃるかと思いますが、そうして、だらだらと治らない鼻炎を先送りした結果が①~③のケースになっている印象があります。悲しくなりますね。早く適切な処置をすれば、治すこともできたのにと・・・。
こうした悲劇を起こさないために、上記のケースはご参考までに気にとめておいていただければ幸いです。
さて、とくに鼻血が混じる鼻汁は、要注意だと考えてください。
鼻のなかに、がんがあることもありますし、写真のように、上あごにできた口腔がんが、骨を突き破り、鼻のなかへ進行して鼻血が出ることもあります。
鼻のなかにできたがんは、内臓にできたがんのように、外側から目で見つけることはできませんが、口腔がんは、お口のなかをみれば見つけることができる場合が多いです。
ですので、もし長引く鼻血がでてるようなら、口腔がんの可能性も否定できませんので、お口のなかもよくみてくださいね。御心配でしたら、当科へどうぞ。
いかがでしたでしょうか?本当に多いんですよ(頻繁なレベルです)口の病気から鼻炎を起こすパターンは。
ですので今回歯科・口腔外科担当医の私がご説明しました。
最後にぜひ以下★をご参考までに頭のすみに入れておいていただけたらと思います。
★鼻炎はほっとかない・色のついた鼻汁が1カ月を過ぎてもでるようなら病院で検査をして原因をつきとめましょう。
★薬だけで完全に治らない鼻炎は口の病気も疑うべき。歯科を受診していただければ、精査します。
★長引かせれば、結局治りにくくなることもある。動物のためにも治る希望がないなら、薬ばかりに頼るのはやめましょう。後で後悔するかも。
★鼻血を繰り返すようなら病院へ。
今回お話した内容のなかで、『お口と鼻のなかの関係性』『歯周病と鼻炎について』の詳しい部分は当院HPのこちら#
#歯科レポート 『抜歯の意味を知るpart.4』
#お知らせアーカイブ『口腔鼻腔瘻』
ぜひご覧になってくださいね。
引きつづき、飼い主さんに役立つ知識を今後も発信してまいります
今後ともよろしくお願い申し上げます。
※鼻炎の原因がすべて口の病気と関係しているわけではありませんので、その点をご注意ください
歯科医と獣医のダブルライセンスを保有し、高度歯科医療を施せるスーパードクター。
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