『ペットのお口が汚いと・・家庭を脅かす魔の手になる~汚いお口はウ〇チなみ~』
御世話になります歯科・口腔外科の江口です。
今回は、いつもと違った切り口で、ペットのお口の問題が起こす弊害について、皆さんにお伝えしたいと思います。それは、『同居ペットのお口が汚いことで、飼い主さん側の家庭が不健康になる可能性』についてです。
本テーマでは、ペットのお口の不衛生は、場合により、私たち人間側にも健康被害が及ぶ『魔の手』になることがあるという、1つの警鐘を鳴らします。あとでその意味が分かりますが、犬や猫と同居している飼い主さん、とくに『ご高齢の方や小さいお子さんがいるご家庭』の方は、このテーマを通じて、ペットのお口のことを今まで以上に気にしていただく、1つのきっかけになっていただければ幸いです。
さて、ひと昔は、犬や猫といったペットは、どちらかといえば外で飼うことが多かったようですが、現在は、完全室内飼いがふつうになっていますよね。これは、いわゆる人間と生活空間をともにして同居している状態なわけですが、ふだん同じ空間に一緒にいるからこそ、ペットとの親近感が増すものですよね。それが癒しでもあり、安心感を与えてくれる大きな存在になっているのは間違いないと思います。それだけペットとの距離感が近いわけですが、それは必ずしも良い面ばかりとは限りません。例えば、ペットから、ばい菌や病気をうつされてしまうこともあります。
ペットから、ばい菌や病気がうつされる場所として、注目しなければならないところが、じつは、『お口のなか』です。
犬や猫のお口のなかには、普段から、人間のお口にいないような、ばい菌がたくさん住んでいます。たとえば、パスツレラ菌という名前のばい菌がいますが、それが人間にうつると悪さをすることが知られています。とくに免疫の弱い方(高齢者、乳幼児、がん治療中の方、糖尿病の方、免疫を抑えるお薬を飲んでいる方など)がそうしたばい菌にさらされると、とくにその影響を受けてしまい、敗血症や肺炎などという命にかかわる怖い状態になる事例も報告されています。
では、ここで大事なことをいいますね。
お口が汚れていないふつうの状態ですら、犬や猫のお口には、こうしたばい菌が住んでます。ふつうの状態でそれですよ。しかし、お口がキレイでしたら、その数もある程度の数で抑えられていることでしょう。では逆に、お口がひどく汚れている状態だとしたら、どうでしょうか?ばい菌がそれ以上に増えて、お口のなかにあふれかえっている状態になります。これはたいへん怖いことですよ。ペットのお口が汚い状態を放置すると、例えば、歯周病を招き、ペットの健康にも良くないことですが、それと同時に、飼い主さん側にとっても、じつは無視できない不都合が起きるのです。その理由はこのあとの話を読んでみてください。
さて、私が、お口がキレイ、汚いといった話をしていますが、そもそも、そのお口の汚さを決めているのが、『歯の汚れ』になります。
冒頭の写真をご覧ください。これは当科を受診した、ある小型犬の下の奥歯を撮影したものです。歯がなにかで汚れてますよね?みていただくと、白いヨーグルトのようなものがたくさん歯を覆っています。これなにか分かりますか?これは歯に付着する代表的な汚れ、『歯垢(しこう)デンタルプラーク』という、お口のばい菌がたくさん住み着く集合住宅(いわば、住みか)です。この歯垢は耳かき1杯程度の量(1グラム)で、ウンチと同じくらいばい菌がいるとされています。汚い話で恐縮ですが、例えば、ウンチが歯についている状態を想像してください。それと同じですよ。単純に不潔ですよね。このように歯には、濃厚なまでのばい菌がいるすみかが、できてしまうものなんです。
ちなみに、この子は、残りのほぼすべての歯がこのような歯垢まみれの状態でした。わかりますか?『すべての歯にウンチがついてるのと同じ状態』という衝撃が・・・。これはいうなれば、お口のなかそのものがウンチと同じあるいは、それ以上かもしれません。当然のことながら口臭もひどくなります。そして、ここまで歯が歯垢だらけですと、歯垢のばい菌により、歯周病が発症します。実際この子もひどい歯周病でした。ちなみに、多くの飼い主さんがよく気にされている、歯石よりも、実は、むしろ『歯垢のほうが、ばい菌だらけ(塊)』ですから、汚いんですよ。
もし、ペットのお口のなかがこのような状態ですと、おそらく1mくらい離れてた位置にいても、同じ部屋なら、お口のくさい臭いがしてきます。そして、よだれは、ばい菌の濃厚汁となってますので、ペットが動き回ってよだれがついた場所は、ばい菌スポットになって汚染され、臭くなります、結果的に、お家そのものが不衛生になるわけです。冗談でなく、ひどいとその臭いで、ハエが寄ってくるなんてこともあります・・。
ちなみに、これは私の実話ですが、学生時代、友達のアパートに遊びにいったときに、飼われていたワンちゃんがひどい歯周病で、臭くなったよだれを床のそこかしこに垂らしており、玄関入った瞬間から、その子のすさまじい口臭がしたという経験があります。ワンちゃんに否はないですが、このように、同居ペットのお口が不衛生になることが、ひいては、家庭のなかまでも不衛生にしてしまう悲劇となってしまうわけです。
また、そういう状態の子と、お口付近を触るなどのスキンシップをすると・・・・これが、どういう意味か、わかりますね?ばい菌の濃厚汁をプレゼントされます。
そうした、ペットもお家も不衛生な状態になってしまったなかで、ご家庭に免疫が弱い家族が一緒に同居されていれば、どうなるでしょうか。
例えば、たくさんのパスツレラ菌などがお家にまき散らされた環境、濃厚なばい菌爆弾(ウンチなみ)と化したペットのお口でスキンシップ、甘噛みなんてされようものなら・・・、まさにこうしたことが、とくに免疫の弱い方たちに対して、健康被害をまねく『魔の手』になってしまうわけです。
ここで、大事なことは、ペットがお口が汚いからといって、決して悪者にしないことです。家族とスキンシップをとりたい、甘えたいかもしれないのに、そうしたことが原因で邪険にされてしまうのは、あまりにかわいそうですよね。なにも好きこのんで、お口を汚くしてるわけではないのですから。
そうならないように、ペットのお口をキレイに衛生的に保ってあげること、つまり歯垢だらけの歯にならないように、ふだんから、飼い主さんが歯磨きするなどで、維持できれば、お口のばい菌の数も減りますし、歯周病予防で健康に保てるになるだけでなく、ひいては、魔の手にはならず、ご家庭への健康被害リスクを減らすことにもつながり、お家も不衛生にならずにすみます。お口を衛生的に保つことの価値は、同居ペットがいるご家庭ほど、高いと言えるのではないでしょうか?
ちなみに、お口が大変不衛生になっている歯周病に行う治療は、汚くなった歯をキレイにするだけでなく、ばい菌の住処を減らしますので、結果、歯周病を改善するだけでなく、お口を衛生的な環境に戻してあげるものでもあります。つまりペットを衛生的にするものでもあるわけですね。そういう意味でいうと、歯周病の治療は、ペットだけでなく、ひいては、そのご家庭も衛生的になるという、良い効果もあるといえるでしょう。
最後に、今回のコラムを通じて、ぺットをお家のなかで衛生的に飼うためには、お口をキレイに(歯をキレイに)するということも、すごく大事なことなのだと感じていただけたら幸いです。ペットも飼い主さん側も気持ちよく、生活が送れるように、ぜひ、この機会にペットのお口の衛生状態を一度、気にされてみてはいかがでしょうか?
今後とも、引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。
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