~歯科コラム番外編~
歯科医師のお仕事➀ 「訪問歯科」
御世話になります、歯科・口腔外科の江口です。
たまに飼い主さんから、「歯科の江口先生って、毎週水曜日と隔週木曜日の週1~2日しか病院にいないですよね?
ふだんは、どこで働いてるいるんですか?』というご質問をいただくことがあります。そこで、当院以外で、私がなにをしているのか、その一部を少し垣間見ていただこうかと、大変恐縮ながら、歯科コラム番外編として、お話したいと思います。動物病院の内容とは、ズレますが、どうかご容赦いただけますと幸いです。
さて、冒頭の写真をみれば、私がなにしているか、お察しいただけるでしょうか?
すでにご存知の方もおりますように、私は歯科医師免許を持った獣医師です。
その経緯は以前コラム
に載っていますので、気になる方はどうぞご覧くださいね。
余談ですが、私は当院に勤務する日以外は、2024年5月現在、一般の歯科医院や、総合病院の口腔外科、訪問歯科など、じつは、獣医として働いているわけではなく、歯科医師としてお仕事をしています。歯科医師と獣医師の免許がある以上は、人間も動物もどちらも、それ相応に治療できなければならない。これが自分のモットーですので、偏りなくいるため、二刀流で頑張っています。
余談が長くなりすみません。さて、そんな私を通してではありますが、みなさんが知る機会も少ない、歯科医師のお仕事について、少しクローズアップしてみたいと思います。こんなことも歯医者さんでは、やっていると、認知いただけたら幸いです。
では、本題ですが、「訪問歯科:ほうもんしか」という用語を聞いたことがある方はいるでしょうか?文字どおり、訪問して歯科診療をすること、要は、「歯医者さんの往診」です。お医者さんの往診はよく聞きますよね?ちなみに、当院では副院長先生が動物診療で往診をされています。しかし、歯医者さんの往診は、あまりなじみがないかもしれません。しかし、昨今、じつは、歯医者さんの往診である、訪問歯科は、非常にニーズが高いことはご存知でしょうか?
その背景に、日本は、超高齢社会を迎え、介護する側も介護される側も高齢者という、自宅での老老介護という状況が、近年、社会問題化しております。
とくに、超高齢で、病気などにより体が不自由になり、寝たきり状態、車いすの生活を余儀なくされたり、また、老老介護などで、介護する側も負担が大きい場合、ご自宅での介護生活が困難となり、ホスピスや、介護施設などの施設に入所される方もいらっしゃいます。
そうした介護が必要な方々は、歯が痛い・入れ歯が合わない・あごが痛いなど、お口に有事が起きた時に、「歯科医院に通院することじたいが、物理的に非常に難しいのです」。ちなみにそうした有事があると、こうした方々は、食事困難になることもあり、健康な方に比べて、余計に体力が衰えてしまいがちです。また、介護が必要で病弱な方は、ものを飲み込む機能が衰えていることも少なくなく、食事の際にむせることも、比較的よくあります。むせると、肺へつながる気管に、唾が落ちてしまうことがありますが、お口が不衛生な状態ですと、お口のばい菌で濃厚な唾が、気管に落ちますので、それで誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなります。また、むせがなくても、無意識に誤嚥してしまう、不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)なるものもあります。誤嚥性肺炎は命を奪う可能性がある、恐ろしい病気です。そんな肺炎の原因に、お口のばい菌が、まさか関係しているとは思わない方、いるかもしれませんが、実は、医療現場、介護現場では、周知の事実となっています。
ちなみに、当院で診療していると、歯周病が重症化し、ばい菌まみれの不衛生なお口になった、高齢の子たちも多々いますが、じつは、そうした子たちは、比較的、咳の症状を出していることも少なくありません。これ、もしかすると、人間同様に、ばい菌まみれの唾を誤嚥しているからかもしれません。
このように、通院困難な方では、お口の有事、お口の不衛生な状態が、生活の質(QOL)を下げることに直結することもありえるわけです。
さて、こうした、通院が難しい方々に対応すべく、訪問歯科を行っている歯科医院は、昨今、増えてきています。(※すべての歯科医院が訪問歯科に対応しているわけではありません)
訪問歯科は、歯医者が、歯科衛生士さん、助手さんなどと一緒に、ご自宅や施設に訪問し、すでに起きているお口の有事に対応するだけでなく、お口の問題からくる健康問題が起きないよう、介護者の方に、アドバイスをしたり、継続した口腔ケアを行うなどしています。ただ、訪問歯科では、すべての歯科医療機器がそろった、歯科医院と違い、患者さんを寝たきりのまま、車いすに座せたままなど、通常とは限られた状況で、なおかつ、使う器材も限られた条件のもとで、歯科治療をしないといけません。なので、できることも、歯科医院と違って限界がありますが、そうした患者さんのお口の悩みを解決すると、苦痛なく食事がとれるようになることで、活力が出ることもあり、QOLが良くなることも比較的多いと感じます。
とくに、わたしたち、歯科医療者が行う、お口の専門的な口腔ケアは、介護現場では、大きな役割を担っています。お口の衛生状態を良好に保つことに加え、お口の有事が出ないようフォローし、お口の機能が低くならないようにサポートしていくことで、じつは、さきほどお話した、誤嚥性肺炎の予防に一役買っています。なので、介護現場では、口腔ケアの重要性が特に叫ばれており、国もそうしたことに力を入れるようになっています。
人間の患者さんも、ワンちゃん猫ちゃんも、高齢で、体が不自由になり、活動性が低くなるほど、コンディションも落ちて、お口の有事は起こりがちです。ペットも高齢化して、動物医療などにより寿命も伸びていますので、もしかしたら、今後、「訪問動物歯科」なるジャンルができるかもしれませんね。
いかがでしたでしょうか?歯医者のお仕事の1つ、訪問歯科を少しでもご理解いただけたら幸いです。
また折をみて、私の歯科医師のお仕事についてコラムでお送りしたいと思います。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。
今後とも引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。
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